高村 光太郎 作
読み手:アン荻野(2023年)
いやなんです
あなたのいつてしまふのが――
花よりさきに実のなるやうな
種子よりさきに芽の出るやうな
夏から春のすぐ来るやうな
そんな理窟に合はない不自然を
どうかしないでゐて下さい
型のやうな旦那さまと
まるい字をかくそのあなたと
かう考へてさへなぜか私は泣かれます
小鳥のやうに臆病で
大風のやうにわがままな
あなたがお嫁にゆくなんて
いやなんです
あなたのいつてしまふのが――
なぜさうたやすく
さあ何といひませう――まあ言はば
その身を売る気になれるんでせう
・・・
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