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新美 南吉

花のき村と盗人たち

読み手:水谷 ケイコ(2024年)

花のき村と盗人たち

著者:新美 南吉 読み手:水谷 ケイコ 時間:38分21秒

   一

 むかし、花のき村に、五人組の盗人がやって来ました。
 それは、若竹が、あちこちの空に、かぼそく、ういういしい緑色の芽をのばしている初夏のひるで、松林では松蝉が、ジイジイジイイと鳴いていました。
 盗人たちは、北から川に沿ってやって来ました。花のき村の入り口のあたりは、すかんぽやうまごやしの生えた緑の野原で、子供や牛が遊んでおりました。これだけを見ても、この村が平和な村であることが、盗人たちにはわかりました。そして、こんな村には、お金やいい着物を持った家があるに違いないと、もう喜んだのでありました・・・

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