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坂口 安吾

餅のタタリ

読み手:入江 安希子(2024年)

餅のタタリ

著者:坂口 安吾 読み手:入江 安希子 時間:32分1秒

   餅を落した泥棒

 土地によって一風変った奇習や奇祭があるものだが、日本中おしなべて変りのないのは新年にお餅を食べ門松をたてて祝う。お雑煮の作り方は土地ごとに大そうな違いはあるが、お餅を食べ門松をたてて新春を祝うことだけは日本中変りがなかろうと誰しも思いがちである。
 意外にも、新年にお餅も食べず門松もたてない村や部落は日本の諸地にかなり散在しているのだが、上州には特に多い。その上州でもある郡では諸町村の大部分が昔から新年を祝う風習をもっていない。それでも、ま、新年のオツキアイだけは気持ばかり致しましょう、というわけか、三が日だけウドンを食べる。
 もともと上州の人たちは好んでウドンをたべる・・・

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