正宗 白鳥 作
読み手:小林 きく江(2026年)
このごろは淺間山もしきりに煙を噴いてゐる。鳴動して黒煙を吐き白煙を吐いてゐる。天明の大噴火を想像すると、今の世にだつて、無數の熔岩が猛烈な勢ひをもつて湧出して、六里ヶ原の慘状を新たに現出するのではないかと氣遣はれたりするのであるが、それは詩中の不安情調で、わが心に陰鬱の影がさすのではない。さえた空に、鳴動とともに、むくむくと噴き上つた煙が漂ふのは、見るからに壯快なのである。
目に見えぬ灰が、いつとなしに地上に跡を留めてゐることがあつても、それはそれだけのことである・・・
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