鷹野 つぎ 作
読み手:よしもと ひろこ(2026年)
海の南風をうけている浜松の夏は、日盛りでもどこか磯風の通う涼しさがありましたが、夜は海の吐き出す熱気のために、却って蒸暑い時もあるのでした。
そうした夜は寝床にうすべりを敷き、私たちも大人の真似をしてひとしきり肩に濡手拭をあてて寝む事もあるのでした。けれどそれも八月頃のことで、九月も終り頃からは、朝あけや、夕方の空は、露っぽい蒼さに澄んでくるのでした。
そのうち日中でも秋の爽やかな風が通う頃になりますと、私の家でも虫干しが始まりました。
衣類が干される日には、私は小腰をかがめて、吊紐にかけた衣類の下を潜って歩いたりしました。すると樟脳や包袋の香りと一緒に、・・・
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