芥川 龍之介 作
読み手:水野 久美子(2026年)
「――黄大癡といえば、大癡の秋山図をご覧になったことがありますか?」
ある秋の夜、甌香閣を訪ねた王石谷は、主人のと茶を啜りながら、話のついでにこんな問を発した。
「いや、見たことはありません。あなたはご覧になったのですか?」
大癡老人黄公望は、梅道人や黄鶴山樵とともに、元朝の画の神手である。
南田はこう言いながら、かつて見た沙磧図や富春巻が、髣髴と眼底に浮ぶような気がした。
「さあ、それが見たと言って好いか、見ないと言って好いか、不思議なことになっているのですが、――」
「見たと言って好いか、見ないと言って好いか、――」・・・
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