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堀 辰雄

姨捨

読み手:阿蘇 美年子(2014年)

姨捨

著者:堀 辰雄 読み手:阿蘇 美年子 時間:48分16秒

わが心なぐさめかねつさらしなや
をばすて山にてる月をみて
          よみ人しらず
   一

 上総の守だった父に伴なわれて、姉や継母などと一しょに東に下っていた少女が、京に帰って来たのは、まだ十三の秋だった。京には、昔気質の母が、三条の宮の西にある、父の古い屋形に、五年の間、ひとりで留守をしていた。
 そこは京の中とは思えない位、深い木立に囲まれた、昼でもなんとなく薄暗いような処だった・・・

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