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新美 南吉

チューリップ

読み手:宮澤 幸子(2016年)

チューリップ

著者:新美 南吉 読み手:宮澤 幸子 時間:5分7秒

 學校の歸りに君子さんはお友達のノリ子さんにうちのチユーリツプの自慢をしました。
「うちで咲いたチユーリツプは、お花屋さんが賣りに來るのより五倍も綺麗なのよ。」
「あら、いゝわね。」とお友達のノリ子さんは羨しさうにきいて首をかしげました。
「クレイヨンの赤とどつちが赤いかくらべて見たのよ。そしたらクレイヨンの赤の方がづつとうすくつて汚いの。」
「あらそをを。」
「うちの母さんがいつてたわ、この花から口紅がとれやしないだらうかつて。」
「そをを。」・・・

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