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野村 胡堂

銭形平次捕物控 瓢箪供養

読み手:伊藤 和(2018年)

銭形平次捕物控 瓢箪供養

著者:野村 胡堂 読み手:伊藤 和 時間:1時間3分21秒

   一

 「あ、八じゃねえか。朝から手前を捜していたぜ」
 路地の跫音を聞くと、銭形平次は、家の中からこう声をかけました。
「へエ、八五郎には違えねえが、どうしてあっしと解ったんで?」
 仮住居の門口に立ったガラッ八の八五郎は、あわてて弥蔵を抜くと、胡散な鼻のあたりを、ブルンと撫で廻すのでした。
「橋がかりは長えやな、バッタリバッタリ呂律の廻らねえような足取りで歩くのは、江戸中捜したって、八五郎の外にはねえ」
 平次は春の陽溜りにとぐろを巻きながら、相変らず気楽なことを言っているのです・・・

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