羽仁 もと子 作 たましいの教育読み手:宮崎 文子(2019年) |
思慮というものの全然芽を出していない幼児には、ただ外形ばかりが強い問題である。
幼児ほど形の上から物を鵜呑みにするものはない。そうしてその鵜呑みにしたことを、よいこととして守ってゆくものはない。
さらに幼児ほど好奇心の強いものはない。十分かれらの好奇心に投じてゆくならば、そのまちがっていることも、必ずなおしてしまうことができる。
それゆえ幼児には、外形をもってまずよいことを鵜呑みにさせることが必要である。
また私たちが知らないうちに彼が悪いことを鵜呑みにしていることを発見したならば、その好奇心を利用して、それと反対なことをまず鵜呑みにさせなくてはならない。
しかし鵜呑みはどこまでも鵜呑みである。どんなによいことを鵜呑みにさせておいても、それが彼の一生を支配してゆく力はない・・・