林 芙美子 作
読み手:松岡 初子(2019年)
袷から単衣に変るセルの代用に、私の娘の頃には、ところどころ赤のはいった紺絣を着せられたものですが、あれはなかなかいいものだと思います。色の白いひとにも、色の黒いひとにも紺の絣と云うものはなかなかよく似合ったもので、五月頃の青葉になると、早く絣を着せてくれと私はよく母親へせがんだものでした。洗えば洗うほど紺地と白い絣がぱっと鮮かになって、それだけ青葉の季節を感じます。
昔、下谷の下宿にいました頃、下宿のお上さんが、「あのひとは染のいい絣を着ていたからいい家の息子に違いない」なぞと、部屋を見に来る学生のなりふりを見てこう云っておりましたが、なるほど面白いなと思いました・・・
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