室生 犀星 作
読み手:齋藤 こまり(2021年)
けふはえびのように悲しい
角やらひげやら
とげやら一杯生やしてゐるが
どれが悲しがつてゐるのか判らない。
ひげにたづねて見れば
おれではないといふ。
尖つたとげに聞いて見たら
わしでもないといふ。
それでは一体誰が悲しがつてゐるのか
誰に聞いてみても
さつぱり判らない。
生きてたたみを這うてゐるえせえび一疋。
からだじうが悲しいのだ。
© & ℗ 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.
Unauthorized duplication and distribution are strictly prohibited.
(掲載の音声、文章、デザイン等の無断転載・公衆送信を禁じます)