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夢野 久作

二つの鞄

読み手:かえるさん(2022年)

二つの鞄

著者:夢野 久作 読み手:かえるさん 時間:2分55秒

 小さな鞄と大きな鞄と二つ店に並んでおりました。大きな鞄はいつも小さな鞄を馬鹿にして、
「お前なんぞはおれの口の中に入ってしまう」
 と冷かしました。
 二つの鞄は同じ時に同じ人に買われて、同じ家に行きました。すると小さな鞄の中にはお金や何か貴いものが詰められて、人間に大切に抱えられて行きます。大きな鞄はあべこべにつまらないものばかり詰められて、荷車に積まれたり投げ飛ばされたりしておりました・・・

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