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芥川 龍之介

妙な話

読み手:アン荻野(2022年)

妙な話

著者:芥川 龍之介 読み手:アン荻野 時間:20分5秒

 ある冬の夜、私は旧友の村上と一しょに、銀座通りを歩いていた。
「この間千枝子から手紙が来たっけ。君にもよろしくと云う事だった。」
 村上はふと思い出したように、今は佐世保に住んでいる妹の消息を話題にした。
「千枝子さんも健在だろうね。」
「ああ、この頃はずっと達者のようだ。あいつも東京にいる時分は、随分神経衰弱もひどかったのだが、――あの時分は君も知っているね。」
「知っている。が、神経衰弱だったかどうか、――」
「知らなかったかね。あの時分の千枝子と来た日には、まるで気違いも同様さ。泣くかと思うと笑っている。笑っているかと思うと、――妙な話をし出すのだ。」・・・

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