島木 健作 作
読み手:小林 きく江(2022年)
寝つきりに寝つくやうになる少し前に修善寺へ行つた。その頃はもうずゐぶん衰弱してゐたのだが、自分ではまだそれほどとは思つてゐなかつた。少し体を休めれば、ぢきに元気を回復するつもりでゐた。温泉そのものは消極性の自分の病気には却つてわるいので、私はただ静かな環境にたつたひとりでゐることを欲したのである。修善寺は前に一晩泊つたことがあるきりで、べつにいい所だとも思はなかつたが、ほかに行くつもりだつた所が、宿の都合がわるいと断つて来たので、そこにしたのだつた。
宿についた私はその日のうちにもうすつかり失望して、来たことを後悔しなければならなかつた・・・
© & ℗ 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.
Unauthorized duplication and distribution are strictly prohibited.
(掲載の音声、文章、デザイン等の無断転載・公衆送信を禁じます)