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芥川 龍之介

尾生の信

読み手:土屋 由美子(2022年)

尾生の信

著者:芥川 龍之介 読み手:土屋 由美子 時間:8分50秒

 尾生は橋の下に佇んで、さっきから女の来るのを待っている。
 見上げると、高い石の橋欄には、蔦蘿が半ば這いかかって、時々その間を通りすぎる往来の人の白衣の裾が、鮮かな入日に照らされながら、悠々と風に吹かれて行く。が、女は未だに来ない。
 尾生はそっと口笛を鳴しながら、気軽く橋の下の洲を見渡した。
 橋の下の黄泥の洲は、二坪ばかりの広さを剰して、すぐに水と続いている・・・

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