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岡本 かの子 作
読み手:小川 幸香(2011年)
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それほど茶好きでなくとも、新茶には心ひかれる。 あの年寄りじみた、きつい苦みがないし、晴々しい匂ひがするし、茶といふよりも、若葉の雫を啜るといふ感じである。 色がいゝ。白磁の茶椀の半を満してゆらめく青湖の水。 さなりき、誘ふニンフも 誘はるゝ男妖精も共に髪ぞ青かりし 揺曳とした湯気の隙間から、茶椀の岸にさういふ美麗が見えるやうな気がする・・・