太宰 治 作 あさましきもの読み手:緒方 朋恵(2011年) |
賭弓に、わななく/\久しうありて、はづしたる矢の、もて離れてことかたへ行きたる。
こんな話を聞いた。
たばこ屋の娘で、小さく、愛くるしいのがいた。男は、この娘のために、飲酒をやめようと決心した。娘は、男のその決意を聞き、「うれしい。」と呟いて、 うつむいた。うれしそうであった。「僕の意志の強さを信じて呉れるね?」男の声も真剣であった。娘はだまって、こっくり首肯いた。信じた様子であった・・・