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薄田 淳介 作
読み手:菅野 秀之(2011年)
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野も、山も、青葉若葉となりました。この頃は――とりわけて今年はよく雨が降るやうです。雨といつてもこの頃のは、草木の新芽を濡らす春さきの雨や、もつ と遅れて来る梅雨季の雨に比べて、また変つた味ひがあります。春さきの雨はつめたい。また梅雨季の雨は憂鬱にすぎますが、その間にはさまれた晩春の雨は、 明るさと、快活さと、また暖かさとに充ち溢れて、銀のやうにかがやいてゐます・・・