宮沢 賢治 作 ざしき童子のはなし読み手:畠山 有香(2012年) |
ぼくらの方の、ざしき童子のはなしです。
あかるいひるま、みんなが山へはたらきに出て、こどもがふたり、庭であそんでおりました。大きな家にたれもおりませんでしたから、そこらはしんとしています。
ところが家の、どこかのざしきで、ざわっざわっと箒の音がしたのです。
ふたりのこどもは、おたがい肩にしっかりと手を組みあって、こっそり行ってみましたが、どのざしきにもたれもいず、刀の箱もひっそりとして、かきねの檜が、いよいよ青く見えるきり、たれもどこにもいませんでした。
ざわっざわっと箒の音がきこえます・・・