小川 未明 作 眠い町読み手:緒方 朋恵(2012年) |
この少年は、名を知られなかった。私は仮にケーと名づけておきます。
ケーがこの世界を旅行したことがありました。ある日、彼は不思議な町にきました。この町は「眠い町」という名がついておりました。見ると、なんとなく活 気がない。また音ひとつ聞こえてこない寂然とした町であります。また建物といっては、いずれも古びていて、壊れたところも修繕するではなく、烟ひとつ上 がっているのが見えません。それは工場などがひとつもないからでありました。
町はだらだらとして、平地の上に横たわっているばかりであります・・・