宮沢 賢治 作
読み手:野崎 明美(2012年)
そらのてっぺんなんかつめたくてつめたくてまるでカチカチのやきをかけた鋼です。
そして星がいっぱいです。けれども東の空はもうやさしいききょうの花びらのようにあやしい底光りをはじめました。
その明け方の空の下、ひるの鳥でもゆかない高いところをするどい霜のかけらが風に流されてサラサラサラサラ南のほうへとんでゆきました。
じつにそのかすかな音が丘の上の一本いちょうの木に聞こえるくらいすみきった明け方です。
いちょうの実はみんないちどに目をさましました・・・
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