宮本 百合子 作 期待と切望読み手:福井 一恵(2012年) |
音楽に対しては全く素人であって、しかも音楽についてはある興味をもっているものの一人として、私は日本の将来の音楽的発達について少なからず希望を抱い ております。音楽上の創造力も技術も、これから十五年の後はおどろくべき進歩があるでしょう。然し、この期待の一面には、今日の音楽のおかれている複雑な 社会の事情や音楽界の伝統習慣が、既に十分その困難性や多難性をも示し語っているように見えます。
作曲家達が逢着している所謂日本的なものの再発見の問題には、進歩的な文学者がそれにぶつかって最も健全な人間的芸術的解決を見出そうと努力していると同じ努力が要求されている・・・