宮沢 賢治 作 クねずみ読み手:室 由美子(2012年) |
クという名前のねずみがありました。たいへん高慢でそれにそねみ深くって、自分をねずみの仲間の一番の学者と思っていました。ほかのねずみが何か生意気なことを言うとエヘンエヘンと言うのが癖でした。
クねずみのうちへ、ある日、友だちのタねずみがやって来ました。
さてタねずみはクねずみに言いました。
「今日は、クさん。いいお天気です。」
「いいお天気です。何かいいものを見つけましたか。」
「いいえ。どうも不景気ですね。どうでしょう。これからの景気は。」
「さあ、あなたはどう思いますか・・・