小川 未明 作 ねことおしるこ読み手:池戸 美香(2012年) |
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、たいへん。」と、まくらをならべている正ちゃんが、夜中にお姉さんを起こしました。よく眠入っていたお姉さんは、何事かと思って、おどろいて目をさまして、
「どうしたの、正ちゃん。」と、いまにも立ち上がろうとなさいました。
「あれ、たいへんじゃないか。」と、正ちゃんは、大きな目をあけて、耳をすましていました。
「なにさ、なにがたいへんなの。」
「アオン、アオンといっているだろう。あれは、黒いどらねこだよ。そして、ニャア、ニャアといっているのは、三毛なんだよ。」・・・