池田 輝方 作 夜釣の怪読み手:野村 洋二(2013年) |
私の祖父は釣が所好でして、よく、王子の扇屋の主人や、千住の女郎屋の主人なぞと一緒に釣に行きました。
これもその女郎屋の主人と、夜釣に行った時の事で御座います。
川がありまして、土堤が二三ヶ所、処々崩れているんだそうで御座います。
其処へこう陣取りまして、五六間離れた処に、その女郎屋の主人が居る。矢張り同じように釣棹を沢山やって、角行燈をつけてたそうです。
祖父が釣をしていると、川の音がガバガバとしたんです。
それから、何だろうかと思っていると、旋てその女郎屋の主人が、釣棹を悉皆纏めて、祖父の背後へやって来たそうです・・・