西東 三鬼 作 秋の暮読み手:横山 宜夫(2022年) |
私は今日、町はづれのお不動様の近くに、用事があつて出掛けたが、用事の済んだのは夕暮れで、道傍の草むらには、秋も終りに近い虫の声が散らばつていた。そんな時間にも、まだお不動様へお詣りの群が切れ/″\につゞいて来るのであつた。
四、五十歳位の女の人が多く、皆、肩から斜に白い襷を掛け、それには津山不動講と書いてあつた。
そして私も岡山県津山市で生れたのだ。
私もこの人達と同じ年配だから、この中には、あの城山の下の小学校で、私と机を並べた人が居るかも知れない。そう思つて私は、あとから/\続いて来る顔を、ジロジロ見ながら歩いた・・・