小川 未明 作 酔っぱらい星読み手:野村 明子(2023年) |
佐吉が寝ていると、高窓の破れから、ちらちらと星の光がさしこみます。それは、青いガラスのようにさえた冬の空に輝いているのでありました。
仰向けになって、じっとその星を見つめていますと、それが福々しいおじいさんの顔になって見えました。おじいさんは、頭に三角帽子をかぶっています。そして、やさしい、まるまるとした顔をして、こちらを見て笑っています。佐吉には、どうもこのおじいさんが、はじめて見た顔でないような気がするのでありました。
「どこで、このおじいさんを見たろう。」と、佐吉は考えながら、星を見上げていますと、さまざまの幻が目に映ってくるのでありました・・・