横光 利一 作 自慢山ほど読み手:成 文佳(2023年) |
何月何日、忘れた。広津和郎氏とピンポンをする。僕の番だ。広津氏傍から僕に云ふ。
「君はピンポンなんかを軽蔑しさうな青年だつたがね。そして、ピンポンから軽蔑されさうな青年だつたが、非常に健康さうになつた。」
僕は自分の自慢をそのとき二つ三つ思ひ出した。こんな自慢を思ひ出させたのは広津氏が悪いのだ。僕は中学時代に野球のキヤプテンをやつてゐた。柔道は選手を三年の時からやつた。試合に負けた記憶がない。走り高飛びは五呎三吋を飛んだ。まだ僕のレコードを破つた者は八年になるがないと云ふ・・・