宮沢 賢治 作 イーハトーボ農学校の春読み手:黒田 留美子(2023年) |
太陽マジックのうたはもう青ぞらいっぱい、ひっきりなしにごうごうごうごう鳴っています。
わたしたちは黄いろの実習服を着て、くずれかかった煉瓦の肥溜のとこへあつまりました。
冬中いつも唇が青ざめて、がたがたふるえていた阿部時夫などが、今日はまるでいきいきした顔いろになってにかにかにかにか笑っています。ほんとうに阿部時夫なら、冬の間からだが悪かったのではなくて、シャツを一枚しかもっていなかったのです。それにせいが高いので、教室でもいちばん火に遠いこわれた戸のすきまから風のひゅうひゅう入って来る北東の隅だったのです・・・