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芥川 龍之介 作
読み手:水野 久美子(2023年)
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たとひ三百歳の齢を保ち、楽しみ身に余ると云ふとも、未来永々の果しなき楽しみに比ぶれば、夢幻の如し。
善の道に立ち入りたらん人は、御教にこもる不可思議の甘味を覚ゆべし。
一
去んぬる頃、日本長崎の「さんた・るちや」と申す「えけれしや」(寺院)に、「ろおれんぞ」と申すこの国の少年がござつた。これは或年御降誕の祭の夜、その「えけれしや」の戸口に、・・・