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岡本 かの子 作
読み手:菅野 秀之(2013年)
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人生の甘酸を味はひ分けて来るほど、季節の有難味が判つて来る。それは「咲く花時を違へず」といつた――季節は人間より当てになるといふ意味の警醒的観念 からでもあらう。季節の触れ方は多種多様で一概には律しられないが、触れ方が単純素朴なほど、季節は味はふ人の身に染めるやうである。
この頃の季節の長所は明るく、瑞々しく、爽かなことである。たいがい憂愁も、しばし忘れさせて呉れる・・・