新美 南吉 作 ひよりげた読み手:都築 洋子(2023年) |
あめが はれました。ジョウフクインの うらの やぶの なかに、やぶっかが わんわん なきました。月が でると ぬれた たけの はが ひかりました。
ジョウフクインの うらの やぶの なかに たぬきが すんで いました。このあいだ うまれて まだ おちちに ばっかり くっついて いる こどもの たぬきと いっしょに、えにしだの 木の ねもとの あなの なかに すんで いました。
おかあさんだぬきは こんや こどもの たぬきに、ばける ことを おしえようと おもって、あなの そとへ でて きました。えにしだの はなが、さっきの あめで おとされて そのへんに ちらかって いるのが、月あかりで みえました。
「さあ ぼうや、もう おちちから はなれなさいよ。」・・・