楠山 正雄 作 牛若と弁慶読み手:入江 安希子(2023年) |
一
むかし源氏と平家が戦争をして、お互いに勝ったり負けたりしていた時のことでした。源氏の大将義朝には、悪源太義平や頼朝のほかに今若、乙若、牛若、という三人の子供がありました。ちょうどいちばん小さい牛若が生まれたばかりのとき、源氏の旗色が悪くなりました。義朝は負けて、方々逃げかくれているうちに、家来の長田忠致というものに殺されました。
平家の大将清盛は、源氏にかたきを取られることをこわがって、義朝の子供を見つけしだい殺そうとかかりました。
義朝の奥方の常盤御前は、三人の子供を連れて、大和の国の片田舎にかくれていました。
清盛はいくら常磐を探しても見つからないものですから困って、・・・