北大路 魯山人 作 海の青と空の青読み手:横山 宜夫(2023年) |
春の海はひねもすのたりのたりとしているそうである。
夏の海はつよい太陽の光をはねかえして輝き渡る。海も光るが、沖の一線にもくもくと盛り上った入道雲も輝く、空も輝く、海に遊ぶ人々の肌も輝く。
秋の海は、夫を失った夫人のたたずまいのようにさびしい。
それから、冬の海は、かたくなに黙っているかと思うと、時たま心の底から怒りを発した如くに怒号する。逆浪は光をかんで暗黒の空に星影はなくとも、高波のしぶきは、瞬間の幻のように岩にくだけ、天にそそりたつ。
春秋の海底には、かぞえ切れない魚類の世界がある・・・