豊島 与志雄 作 夢読み手:横山 宜夫(2024年) |
幼時、正月のいろいろな事柄のうちで、最も楽しいのは、初夢を待つ気持だった。伝説、慣例、各種の年中行事、そういったものに深くなじんでた祖母が、初夢によってその年の運勢が占われることを、私に教えてくれた。二日の朝、或は三日の朝には、昨晩の夢はどうだったかと、祖母は必ず私に尋ねかける。その顔はいつも晴やかで、にこにこしている。そして私がみた夢の解釈が、必ず吉であること、云うまでもない。然しその解釈は、私にはどうでもよいことだった。ただ、そういう運勢的な解釈が加えらるるために、夢は一層魅力をまして、それを待望する気持が煽られるのである・・・