ハンス・クリスチャン・アンデルセン 作 矢崎 源九郎 訳 人魚の姫読み手:齋藤 こまり(2024年) |
海のおきへ、遠く遠く出ていきますと、水の色は、いちばん美しいヤグルマソウの花びらのようにまっさおになり、きれいにすきとおったガラスのように、すみきっています。けれども、そのあたりは、とてもとても深いので、どんなに長いいかり綱をおろしても、底まで届くようなことはありません。海の底から、水の面まで届くためには、教会の塔を、いくつもいくつも、積みかさねなければならないでしょう。そういう深いところに、人魚たちは住んでいるのです。
みなさんは、海の底にはただ白い砂地があるばかりで、ほかにはなんにもない、などと思ってはいけません。そこには、たいへんめずらしい木や、草も生えているのです。そのくきや葉は、どれもこれもなよなよしています・・・