相馬 御風 作 幽霊の足読み手:福井 一恵(2013年) |
或小学校に於ける手工の時間に、Fといふ教師の経験した話。
その日Fは生徒一同に同じ分量の粘土を与へて、各自勝手な物を作らせて見ようと企てた。生徒は皆大いに喜んで各自思ひ/\に、馬だの牛だの人形だの茄子だの胡瓜だのを作つた。
ところが、中にたゞ一人時間が過ぎても、ぼんやり何か考へ込んでゐて何も作らない生徒があつた。彼はもと/\其の級第一の劣等児であつた。算術や読方はいふまでもなく、学科といふ学科は悉くゼロに近い点数をとつてゐた・・・