上村 松園 作 「汐くみ」の画に就いて読み手:坂井 あきこ(2024年) |
「汐くみ」は私としては相当に苦心を費やし、努力を払うた作品でございます。殊にこの画について心を用いた点は色調でございました。しかしいったいの釣合をとるためには、幾遍も素描をやり直しまして、自分自身でやや満足出来るものに致しましてから、本当に筆を執ったのでございます。
この画は、大作ではありませんけれども、全体に於て私自身の有って居ります考えなり筆なりを、自分でやや満足し得ますところまで現し得たものと信じて居ります。もっとも自分自身で満足するほどの作品というものは、到底出来難いものでございますから、厳密に申しますと、この「汐くみ」だからと申しまして決して十分のものではございませんが、・・・