ハンス・クリスチャン・アンデルセン 作 矢崎 源九郎 訳 絵のない絵本
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第六夜
「わたしはウプサラにいました」と、月が言いました。「わたしは作物の育たない畑と、わずかしか草の生えていない大きな平野を見おろしました。わたしはフュリス河に自分の姿を映しました。ちょうどそのとき、蒸気船にびっくりした魚が、葦のあいだに逃げこみました。わたしの下の方を雲が走っていましたが、長い影をオーディンの墓、トールの墓、フレイヤの墓と人々が呼んでいる小高い丘の上に投げていきました。これらの丘の上をおおっている薄い芝生の中には、人々の名前が切りこまれていました。ここには旅行者たちが自分の名前を刻みつけることのできるような記念石もなければ、どこかに自分の姿をえがかせることのできるような岩壁もありません・・・