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宮沢 賢治

春と修羅 カーバイト倉庫

読み手:上田 あゆみ(2024年)

春と修羅 カーバイト倉庫

著者:宮沢 賢治 読み手:上田 あゆみ 時間:1分16秒

 カーバイト倉庫

まちなみのなつかしい灯とおもつて
いそいでわたくしは雪と蛇紋岩との
山峡をでてきましたのに
これはカーバイト倉庫の軒
すきとほつてつめたい電燈です
  (薄明どきのみぞれにぬれたのだから
   巻烟草に一本火をつけるがいい)
これらなつかしさの擦過は
寒さからだけ来たのでなく
またさびしいためからだけでもない

(一九二二、一、一二)

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