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宮沢 賢治 作
読み手:上田 あゆみ(2024年)
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カーバイト倉庫
まちなみのなつかしい灯とおもつて いそいでわたくしは雪と蛇紋岩との 山峡をでてきましたのに これはカーバイト倉庫の軒 すきとほつてつめたい電燈です (薄明どきのみぞれにぬれたのだから 巻烟草に一本火をつけるがいい) これらなつかしさの擦過は 寒さからだけ来たのでなく またさびしいためからだけでもない
(一九二二、一、一二)