新美 南吉 作 ひとつの火読み手:緒方 朋恵(2013年) |
わたしが子どもだったじぶん、わたしの家は、山のふもとの小さな村にありました。
わたしの家では、ちょうちんやろうそくを売っておりました。
ある晩のこと、ひとりのうしかいが、わたしの家でちょうちんとろうそくを買いました。
「ぼうや、すまないが、ろうそくに火をともしてくれ。」
と、うしかいがわたしにいいました。
わたしはまだマッチをすったことがありませんでした。
そこで、おっかなびっくり、マッチの棒のはしの方をもってすりました・・・