中谷 宇吉郎 作 おにぎりの味読み手:菅野 秀之(2014年) |
お握りには、いろいろな思い出がある。
北陸の片田舎で育った私たちは、中学へ行くまで、洋服を着た小学生というものは、誰も見たことがなかった。紺絣の筒っぽに、ちびた下駄。雨の降る日は、 藺草でつくったみのぼうしをかぶって、学校へ通う。外套やレインコートはもちろんのこと、傘をもつことすら、小学生には非常な贅沢と考えられていた。
そういう土地であるから、お握りは、日常生活に、かなり直結したものであった・・・