尾崎 紅葉 作
読み手:水野 久美子(2026年)
むかしむかし翁は山へ柴刈に、
媼は洗濯の河にて、
拾いし桃実の裏より
生れ出でたる桃太郎、
猿雉子犬を引率して
この鬼ヶ島に攻来り、
累世の珍宝を分捕なし、
勝矜らせて
還せし事、
この島末代までの
恥辱なり、
あわれ願わくは
武勇勝れたる鬼のあれかし、
其力を藉てなりとも
この遺恨霽さばやと、
時の王鬼島中に触を下し、
誰にてもあれ日本を征伐し、
桃太郎奴が若衆首と、
分捕られたる珍宝を携え還らんものは、
此島の王となすべしとありければ、・・・
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