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織田 作之助 作

聴雨

読み手:水野 久美子(2026年)

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聴雨

著者:織田 作之助 読み手:水野 久美子 時間:55分14秒

 午後から少し風が出て来た。床の間の掛軸がコツンコツンと鳴る。襟首が急に寒い。雨戸を閉めに立つと、池の面がやや鳥肌立つて、冬の雨であつた。火鉢に火をいれさせて、左の手をその上にかざし、右の方は懐手のまま、すこし反り身になつてゐると、
「火鉢にあたるやうな暢気な対局やおまへん。」といふ詞をふと私は想ひ出し、にはかに坂田三吉のことがなつかしくなつて来た。
 昭和十二年の二月から三月に掛けて、読売新聞社の主催で、坂田対木村・花田の二つの対局が行はれた・・・

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