鷹野 つぎ 作
読み手:よしもと ひろこ(2026年)
郷里の方の学校友達から、ふと二三度の便りがあつてから、しばらくして彼の女の息子を東京の学校へ入学させる用事をかねて、私をまで訪ねてくれた。
二十年近くも会はなかつたが、瞬時私は若いころの面影を素直に年をとらせた友達を見て意外なほどであつた。若し自然の年齢といふものがあるなら、彼の女の若い日のおもかげにそのまま徐かに年齢の影を宿してゐるやうな、その穏やかな変化を指していつてるものと思つていいであらう。彼の女には時に虐げられたり、抗らつたあとが見えないのだつた。
「まあ、お変りにならないこと」私は話の序でにいつてみせたが、意味はその変りかたの良さであつた。
「時」の各人に及ぼす種々の相違が、このせつふと心に触れて来る・・・
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