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新美 南吉 作
読み手:室 由美子(2014年)
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赤とんぼは、三回ほど空をまわって、いつも休む一本の垣根の竹の上に、チョイととまりました。 山里の昼は静かです。 そして、初夏の山里は、真実に緑につつまれています。 赤とんぼは、クルリと眼玉を転じました。 赤とんぼの休んでいる竹には、朝顔のつるがまきついています。昨年の夏、この別荘の主人が植えていった朝顔の結んだ実が、また生えたんだろう――と赤とんぼは思いました・・・