小川 未明 作 つばめの話読み手:菅野 秀之(2014年) |
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夏の初めになると、南の方の国から、つばめが北の方の国に飛んできました。そして、電線や、屋根の上や、高いところ に止まって、なきました。広い野原の中を汽車がゆくときに、つばめは、電線の上に止まって、じっとながめていたこともあります。また、青い海辺に連なる電 線に止まって、海の方を見ていたこともあります。けれど、また町の人家の店頭に巣を造って日が暮れるころになると、みんな家の中の天井の巣の中に入って休 みます。そして、夜が明けると外に出て、空や往来の上をひらひらと飛びまわってないているのでありました・・・