巖谷 小波 作 三角と四角読み手:池戸 美香(2015年) |
数学の中に幾何というものがある。幾何を学ぶにわ、是非とも定木が入る。その定木の中に、三角定木というのがある。――これわ大方諸君も御存じでしょう。
ところがこの三角定木、自分の体にわ、三方に尖った角のあるのを、大層自慢に致し、世間に品も多いが、乃公ほど角のあるものわあるまい、角にかけてわ乃公が一番だと、たった三つよりない角を、酷く鼻にかけておりました。
すると或る日、同じ机の上にあった鉛筆が来ていうにわ、
(筆)三角さん三角さん、お前わ平常から大層その角を自慢しているし、私らもまたお前ほど角の多いものわないと思っていたが、この間来た画板を見たかイ・・・