岡本 かの子 作 愚かな男の話読み手:池戸 美香(2015年) |
「或る田舎に二人の農夫があった。両方共農作自慢の男であった。或る時、二人は自慢の鼻突き合せて喋べり争った末、それでは実際の成績の上で証拠を見せ合 おうという事になった。それには互に甘蔗を栽培して、どっちが甘いのが出来るか、それによって勝負を決しようと約束した。
ところで一方の男が考えた。甘蔗は元来甘いものであるが、その甘いものへもって来て砂糖の汁を肥料としてかけたら一層甘い甘蔗が出来るに相違ない。これは名案々々! と、せっせと甘蔗の苗に砂糖汁をかけた。そしたら苗は腐ってしまった」・・・